開業準備で機器をそろえていると、「食洗機は高いから、最初は手洗いでいい」というお話をよく聞きます。席数が少ないうちは手洗いでも回ります。ただ洗い物が増えてくると、水道代、お湯を沸かすガス代、洗い場に立つ人の時間が月々の費用に響いてきます。

そこで、名古屋市の水道料金、東邦ガスの料金表、愛知県の最低賃金など、公表されている単価を使って、手洗いと業務用食洗機の月々の費用を試算しました。食洗機の側には、電気代と洗剤代、保守費も入れています。前提を変えれば結果も変わるので、数字は「比べ方の見本」としてお読みください。

この記事のポイント

1水道・ガス・電気・洗剤・保守の費用だけなら、1日50食ではほぼ同じ。100食で月約5,700円、200食で月約1.8万円食洗機が安くなる試算

2洗う時間を人件費に換算すると差が広がり、50食でも月約1.5万円の差になる

3本体代・リース料は別に考える。洗い物がごく少ない店(試算では1日30食)は、費用だけなら手洗いのほうが安い

結論:食数ごとの費用の差

まず結果です。下のグラフは、人件費を除いた1か月の費用を並べたものです。中身は水道代、ガス代、電気代、洗剤代、保守費です。

手洗い 食洗機 単位:円/月 9,300 8,850 18,500 12,850 37,100 19,050 1日50食 1日100食 1日200食
人件費と本体代・リース料は含まない。前提は次の節の表のとおりで、あくまで試算です

1日50食では、手洗いと食洗機の費用がほとんど変わりません。食洗機は水もお湯も少なくて済む一方で、電気代と保守費がかかるからです。100食あたりから差が開きはじめ、200食では食洗機のほうが月に1.8万円ほど安くなりました。

洗い場に立つ時間を人件費として数えると、差はさらに広がります。食洗機を使うと洗う時間が半分になる前提なので、50食でも月約1.5万円、200食では月約7.8万円の差です。

業務用食洗機は1回いくら?

下の試算の数字を、1回(1ラック)あたりに直すと次のようになります。水道代・ガス代・電気代・洗剤代の合計を、1日に回すラックの数で割りました。

1日50食 1日100食 1日200食
1日のラック数 約13回 25回 50回
1日の費用(保守費を除く) 約300円 約460円 約710円
1回(1ラック)あたり 約24円 約19円 約14円

回す回数が多いほど、1回あたりは安くなります。洗浄タンクの湯張りや、電源を入れている間の電気代は、回数が少なくてもかかるためです。年間保守契約(月1,250円)を入れると、1日100食では1回あたり約2円上がります。電気代は最大消費電力のまま動いた前提なので、実際はもう少し安くなるはずです。

試算の前提

次の条件で計算しました。食器の数も洗い方もお店ごとに違うので、ご自分の店の数字に置き換えてみてください。

前提 試算で置いた内容
営業日数 月25日
1日の食数 50食・100食・200食の3パターン
1食あたりの食器 4点(皿・小鉢・椀・グラスなど)
手洗いの速さ 1時間に200点(ホシザキの解説記事にある、手洗いは1時間に200枚程度という目安から)
手洗いの水の量 洗っている時間の半分は蛇口から流す。流しっぱなしは1分約12Lなので、平均1分6L=1時間360L
手洗いのお湯 15℃の水を給湯器で40℃にして、1年を通して使う
食洗機の例 ホシザキ JWE-400TUC(アンダーカウンタータイプ・単相100V)
1ラックの食器 16点(同機の公表値「大皿16枚」にそろえた)
すすぎの水 1ラック1.8L(ホシザキ公表値)。60℃の給湯を使う(同社が連続洗浄に必要としている温度)
予洗い 1ラックにつき30秒、水を流す(12L×0.5分=6L。お湯は使わない)
洗浄タンクの湯張り 1日1回、仮に30L(60℃)。実際の容量は機種の仕様書で確認が必要
食洗機の電気 最大消費電力1.215kW(公表値)のまま、電源を入れている間ずっと動いたとする(50食4時間・100食6時間・200食8時間)。実際より多めの見積もり
食洗機を使う作業の速さ 1時間に400点(ホシザキの解説記事にある、食洗機は1時間に400〜1,200枚という目安の下限)。予洗い・ラック詰め・片付けを含む

単価は、次の公表値を使いました(税込。保守費のみ税抜)。

単価 試算に使った値 出どころ
水道代+下水道代 1㎥あたり489.5円(水道275.0円+下水道214.5円) 名古屋市上下水道局の料金表。一般用・2か月61〜100㎥の段階(令和7年10・11月分から適用)
ガス代 1㎥あたり185.79円 東邦ガス 一般ガス供給約款の料金表C(月51〜100㎥)、2026年11月検針分
ガスの熱量 1㎥あたり45MJ 東邦ガスの都市ガス(13A)
給湯器の効率 約80% 日本ガス協会(従来型の給湯器)
電気代 1kWhあたり31円 全国家庭電気製品公正取引協議会の目安単価
洗浄剤・リンス剤 洗浄剤600円/kg・濃度0.1%、リンス剤3,600円/L・濃度0.005% ホシザキがランニングコストの試算に使っている条件
人件費 時給1,195円 愛知県最低賃金(2026年10月1日から)
保守費 年15,000円(税抜)=月1,250円 当社の年間保守契約(1台あたり。部品代は別)

本体の購入費とリース料は、機種や買い方で大きく変わるため表に入れていません。手洗い用の洗剤代も使い方の差が大きいので外しました。入れると手洗いの費用が少し上がります。なお、水の使用量が多いお店ほど水道料金は上の段階の単価になり、差はもう少し開きます。

月額の比較表:手洗いと食洗機

各項目は、1日あたりを1円単位に丸めて25日分にし、100円未満を四捨五入しています。表の左が手洗い、右が食洗機です。

月額(円)手洗い/食洗機 1日50食 1日100食 1日200食
水道代(上下水道) 4,400/1,600 8,800/2,800 17,600/5,200
お湯を沸かすガス代 4,900/1,300 9,700/1,800 19,500/2,900
電気代 0/3,800 0/5,700 0/7,500
洗浄剤・リンス剤 含めず/900 含めず/1,300 含めず/2,200
保守費 0/1,250 0/1,250 0/1,250
小計(人件費を除く) 9,300/8,850 18,500/12,850 37,100/19,050
人件費(洗う時間) 29,900/15,000 59,800/29,900 119,500/59,800
合計 39,200/23,850 78,300/42,750 156,600/78,850
食洗機が安くなる額(小計/合計) 450/15,350 5,650/35,550 18,050/77,750
本体の購入費・リース料 0/機種による 0/機種による 0/機種による

同じ前提で1日30食も計算したところ、人件費を除いた費用は手洗い約5,600円、食洗機約7,950円でした。洗い物がこのくらい少ないお店なら、食洗機の電気代と保守費のほうが上回ります。

計算の中身(1日100食の場合)

食器は100食×4点=400点です。

  • 手洗い:400点÷200点=2時間。水は360L×2時間=720L
    • 水道代:720L×0.4895円=約352円/日 → 25日で約8,800円
    • ガス代:水1Lを25℃上げるのに4.186kJ×25=約105kJ。効率80%なので約131kJ(0.131MJ)。0.131MJ÷45MJ×185.79円=1Lあたり約0.54円。720L×0.54円=約389円/日 → 約9,700円
    • 人件費:2時間×1,195円=2,390円/日 → 約59,800円
  • 食洗機:400点÷16点=25ラック
    • 60℃のお湯:25ラック×1.8L+タンク30L=75L。予洗いの水:25ラック×6L=150L。合計225L
    • 水道代:225L×0.4895円=約110円/日 → 約2,800円
    • ガス代:60℃のお湯は45℃上げるので1Lあたり約0.97円。75L×0.97円=約73円/日 → 約1,800円
    • 電気代:1.215kW×6時間=7.29kWh。×31円=約226円/日 → 約5,700円
    • 洗浄剤:75L×0.1%=75g×0.6円=45円。リンス剤:45L×0.005%=2.25mL×3.6円=約8円。合計約53円/日 → 約1,300円
    • 保守費:15,000円÷12か月=1,250円
    • 人件費:400点÷400点=1時間×1,195円 → 約29,900円

水の量は手洗い720Lに対して食洗機225Lで、約3分の1でした。ホシザキは「手洗いの約5分の1の水量」と説明していますが、この試算では予洗いの水とタンクの湯張りも足したので、差は小さめに出ています。

手洗いで足りるお店、食洗機が向くお店

試算の結果を、お店の条件で分けるとこうなります。

手洗いでも足りやすいお店

  • 1日の食数が少ない(試算では30食で手洗いが安い)
  • オーナーが自分で洗い、人件費が出ていかない
  • グラスや小皿が中心で、洗い物の点数が少ない
  • 厨房が狭く、食洗機を置く場所がない

食洗機が向くお店

  • 1日100食前後より多い
  • 洗い場にスタッフを立たせている
  • ピークに食器が足りなくなる
  • 冬でもお湯をたくさん使って洗っている

「オーナーが自分で洗うから人件費はゼロ」というお店もあると思います。その場合でも、洗い物に1日2時間かかっていたものが1時間で済めば、空いた1時間を仕込みや接客に回せます。お金が出ていくかどうかとは別に、時間の使い方として考えてみてください。

本体代・リース料をどう考えるか

本体の価格やリース料は、機種や大きさ、買い方で変わるので、この記事では数字を出していません。比べるときは、月の差額から「何か月で取り戻せるか」を出すと判断しやすくなります。

月の差額を出す自分の店の食数で試算
年の差額にする月の差額×12
本体代・リース料と比べる何年で取り戻せるか

たとえば試算の1日100食なら、人件費を除いても年約6.8万円(5,650円×12)、人件費を入れると年約42.7万円(35,550円×12)の差です。どちらの数字で考えるかで、結論が変わることもあります。開業資金全体の考え方は飲食店の開業資金、何にいくらかかる?にまとめています。

お金以外の違い

費用のほかにも、手洗いと食洗機には違いがあります。

比べること 手洗い 業務用食洗機
すすぎの温度 手で触れる温度まで(試算では40℃) ホシザキは、すすぎを80℃より下げない設定をすすめている
人手 洗う人が必要。人が足りない日は洗い場が詰まる ラックに並べて入れれば、待つ間にほかの作業ができる
仕上がり 洗う人や忙しさで差が出やすい 温度・時間・洗剤の量が一定
手荒れ お湯と洗剤に長く触れる 触れる時間が短くなる
初期費用 ほぼかからない 本体代、または毎月のリース料
置き場所 シンクだけでよい 本体を置く場所が必要
工事 不要 電源・給湯・排水の工事が必要な場合がある

手洗いのよいところは、初期費用がほぼかからず、場所も工事もいらないことです。開業資金を抑えたい時期には大きな利点なので、「いずれ食洗機を入れる場所と電源だけは確保しておく」という考え方もあります。

食洗機を入れる前に確認すること

食洗機は、置けば使えるわけではありません。買ってから困らないように、次の点を先に確かめておきます。

導入前に確認したいこと

  • 電源は単相100Vか、200V(三相)が必要か
  • 給湯器から60℃前後のお湯が出せるか
  • 排水の位置と勾配がとれるか
  • 本体と、汚れた食器・洗った食器の置き場
  • 湯気の逃げ道(換気)
  • 搬入経路と、扉やカウンターの寸法

タイプごとの違いと、必要な給湯・電源の詳しい話は業務用食洗機の選び方で解説しています。200Vの電源については厨房の電気容量と200V(動力)、ほかにそろえる機器は飲食店の開業に必要な厨房機器リストも参考にしてください。

よくある質問

Q. 業務用食洗機の電気代は月いくらですか? A. この記事の試算(ホシザキ JWE-400TUC、1kWh 31円)では、1日50食で月約3,800円、200食で月約7,500円でした。最大消費電力のまま動き続けた多めの見積もりです。機種と使う時間で変わります。

Q. 食洗機にすると、水道代はどのくらい減りますか? A. 試算の1日100食では、手洗いの水が1日720Lに対して食洗機は225Lで、水道代は月約8,800円から約2,800円になりました。予洗いの水も入れた数字です。

Q. 食洗機を入れたら、点検は必要ですか? A. 洗浄タンクやノズルの汚れ、給湯の温度、排水の詰まりは、洗い上がりや水漏れに直結します。日々の手入れは業務用食洗機の掃除のやり方、故障したときの費用の考え方は業務用食洗機の修理代、点検の中身は業務用食洗機の保守点検で紹介しています。

業務用食洗機の選定・販売のご相談は当社へ

豊翔メンテナンスサービスは、愛知・岐阜・三重で飲食店の開業をお手伝いしています。業界歴15年。ホシザキ・パナソニック・大和冷機・フクシマガリレイ・中西製作所・マルゼン・タニコーなど主要メーカーと直接取引しており、新品の食洗機を業態・席数・予算に合わせて選び、設置の手配まで行います。電気・給排水の接続工事は提携業者と連携して手配します(内装・配管工事そのもの、中古機器の販売・買取は行っていません)。

開業後は、年間保守契約(1台 年15,000円・税抜、定期点検と故障時の出張費・作業費込み、部品代は別)で点検・修理もお受けしています。料金の詳細はサービス・料金をご覧ください。

「うちの食数なら食洗機は元が取れる?」「手洗いで始めて、あとから入れられる?」といった段階からご相談ください。お電話・Webでのご相談は無料です(070-9010-9519、平日9:00〜18:00)。詳しくは機器販売・開業支援のページをご覧ください。

この記事の数字はあくまで試算です。機種や使い方、料金プランで変わります。またガス料金は毎月、水道料金や最低賃金も改定されることがあるため、最新は各公式の案内でご確認ください。参照した公式情報:名古屋市上下水道局「上下水道料金のしくみ」(料金表)、東邦ガス「各月の適用料金」(業務用・産業用)・「当社の都市ガスについて」、全国家庭電気製品公正取引協議会「よくある質問(電力料金の目安単価)」、日本ガス協会「エコジョーズとは」、ホシザキ「業務用食器洗浄機 JWE-400TUC」製品ページ・「アンダーカウンタータイプ 製品特長」「同 省エネ性能」・解説記事「業務用食洗機にはどんな魅力があるの?」、東京都水道局「節水」リーフレット、厚生労働省 愛知労働局「愛知県の最低賃金」。