開業の準備で厨房の図面を引いていると、「グリストラップはどうしますか」と聞かれる場面があります。名前は知っていても、本当に要るのか、どこに置くのか、誰に頼むのかまでは、はっきりしない方が多い設備です。
結論から書くと、油を含む排水を下水道に流す飲食店では、グリストラップ(正式にはグリース阻集器)を設けるのが基本です。そして、大きさと位置は工事が始まる前、図面の段階で決めておかないと、あとから動かすのが難しくなります。
この記事のポイント
1油を含む排水を下水道に流す飲食店には、阻集器の設置が建築基準法施行令で求められている
2床に埋め込む型とシンク下に置く型があり、どちらにするかで内装工事が変わる
3大きさ・位置・申請は、図面の段階で管轄の下水道担当と保健所に確認しておく
制度の内容や運用は、年度や地域で変わることがあります。この記事は一般的な目安です。最新は公式の案内(店舗の所在地の上下水道局・下水道課、保健所)で確認してください。
グリストラップの役割
厨房の排水には、食器や鍋についた油、食べかす、洗剤が混ざっています。これをそのまま流すと、油が配管の中で冷えて固まり、店の排水管や下水道管を細らせていきます。
グリストラップは、その手前で油とごみを分けて受け止める槽です。一般的な形は、次のように3つの部屋に分かれています。
油は水より軽いので上に浮き、重い汚れは底に沈みます。下水へ出ていくのは、その間の比較的きれいな水です。だから、たまった油と汚泥を定期的に取り出さないと、受け止める力がなくなります。日々の清掃はグリストラップの清掃頻度・やり方にまとめています。
設置が求められる根拠
名古屋市上下水道局の案内では、飲食店のように油脂を含む汚水を下水道に流す場合、建築基準法施行令によって阻集器を設けなければならないとされています。ほかの自治体も、建築基準法の関係規定(昭和50年建設省告示第1597号)や下水道条例を根拠に、飲食店へ設置を求めています。
「うちは揚げ物をしないから要らないのでは」という質問もよく受けます。ただ、食器を洗えば油は流れます。油を使う量が少ない業態でも必要かどうかは、自分で判断せず、管轄の下水道担当に確認してください。
床埋め込み型とシンク下の置き型
グリストラップには、大きく分けて2つの置き方があります。
床に埋め込む型
- 厨房の床下に槽を埋め、上をフタでふさぐ
- 容量を大きく取りやすい
- 床の掘り下げや、かさ上げが必要になる
- 位置はあとから動かしにくい
シンク下に置く型
- シンクの下や横に置く箱型
- 床を掘れない物件でも置ける場合がある
- 容量は小さめで、清掃の回数が増えやすい
- 足元の場所をとる
どちらが向いているかは、物件の床の構造と、出る油の量で決まります。テナントビルの2階以上など、床を掘れない物件では置き型しか選べないこともあります。
大きさの決め方
グリストラップの容量は、お店の規模や1日の食数、同時に使う流し台の数などから計算します。名古屋市の場合、容量の基準は市として定めていませんが、排水設備工事の申請のときに阻集器の構造図と容量の計算書を付け、市が確認する流れです。選ぶときの参考として、空気調和・衛生工学会の規格(SHASE-S217-2016「グリース阻集器」)が案内されています。
小さすぎると、すぐ油があふれて詰まりや悪臭の原因になります。大きすぎると、置き場所と費用がかさみます。計算は排水設備の工事業者が行うのが一般的なので、席数とメニューの見込みを早めに伝えておくと話が早く進みます。
開業前に確認したいこと
工事の流れのなかで、グリストラップに関わる確認は次の順番で進むことが多いです。
名古屋市では、排水設備の工事は市の指定排水設備工事店が、施主に代わって上下水道局へ申請します。ほかの市町村でも、指定工事店による工事や事前の届け出を求めている例があります。保健所の施設基準でも、排水が十分にでき、汚水が逆流しないことが求められています(営業許可の施設基準)。
図面の段階で確かめたいこと
- グリストラップを置く位置と型
- シンク・食洗機からの距離
- フタを開けて清掃できる空間があるか
- 冷蔵庫や調理台でフタをふさがないか
- 容量の計算に使う席数・食数
- 申請と工事をどこが行うか
見落としが多いのは、フタの上に機器を置いてしまう配置です。清掃のたびに冷蔵庫や台を動かすことになり、結局は掃除の回数が減って詰まりにつながります。
居抜き物件の場合
居抜き物件は、前のお店のグリストラップが残っていることがほとんどです。内見のときは、位置と型、フタが開けられるか、においや油のたまり具合を目で見ておきましょう。ただし、業態が変わって洗い物や油の量が増えるなら、今の容量で足りるかは改めて確認が必要です。内見での見方は居抜き物件の内見チェックリストを参考にしてください。
グリストラップを含む厨房計画は当社へご相談ください
豊翔メンテナンスサービスは、愛知県小牧市を拠点に、愛知・岐阜・三重で飲食店の開業支援を行っています。業態のご提案、物件探しのサポート、補助金の情報提供(申請は専門家と連携)、厨房のレイアウト図の作成、機器の選定、主要メーカーの新品機器の販売、開業後の保守まで、厨房まわりを通してお手伝いします。
グリストラップの設置そのものは排水設備の工事にあたるため、当社では行っていません(内装・配管工事、中古機器の販売・買取も行っていません)。そのかわり、レイアウト図の段階で、シンクや食洗機とグリストラップの位置、清掃のしやすさを一緒に考えます。機器の設置時の電気・給排水の接続は、提携業者と連携して手配できます。
「この配置でフタを開けられるか見てほしい」といったご相談からどうぞ。お電話・Webでのご相談は無料です。詳しくは開業支援、厨房の配置の考え方は厨房レイアウトの基本をご覧ください。
参照した公式情報:名古屋市上下水道局「よくあるご質問(阻集器について)」「排水設備工事のお申し込み」、愛知県「新たな施設の基準について」。設置の要否や手続きは自治体ごとに異なるため、管轄の上下水道局・下水道課と保健所でご確認ください。


